Saturday, March 12, 2016

Variants of the proposed broad gauge railways (in Japanese)

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発明の名称環境保全大幹線鉄道
発行国日本国特許庁(JP)
公報種別公開特許公報(A)
公開番号特開2001-88690(P2001-88690A)
公開日平成13年4月3日(2001.4.3)
出願番号特願平11-271541
出願日平成11年9月27日(1999.9.27)
代理人【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守 (外1名)
発明者川口 清
要約目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】(a)鉄車輪を有するとともに、高層化された部屋が配置され、搬送式の車体床面を回転式となし車体側面が開閉され、高層化された通路を有する回転扉を備える車両と、(b)該車両へ道路側からゲートを経て搭載され、また前記車両から降車される自動車を管理するゲート管理所が配置されるターミナルとを具備することを特徴とする環境保全大幹線鉄道。
【請求項2】 請求項1記載の環境保全大幹線鉄道において、前記車両は客貨車構造であり、線路軌間は2.503m±1.1mの超広軌、車体幅は5.2m±1.0mの超拡幅、車体高さは7.2±1.0m、軸重は23t±4tとすることを特徴とする環境保全大幹線鉄道。
【請求項3】 請求項1記載の環境保全大幹線鉄道において、前記車両の機関車には、自らの駆動力に加え、編成各車の駆動力配分制御、給電設備と駆動力集中指令制御装置を有し、前記編成各車に引き通した直流母線や周波数一括制御の3相交流母線に給電することを特徴とする環境保全大幹線鉄道。
【請求項4】 請求項3記載の環境保全大幹線鉄道において、前記3相交流母線に接続され、車軸を駆動する軸一体型歯車レス3相交流誘導電動機を具備する車両で編成する列車を構成することを特徴とする環境保全大幹線鉄道。
【請求項5】 請求項3記載の環境保全大幹線鉄道において、前記ゲート管理所に接続されるローカル基地局、該ローカル基地局に接続されるインターネット、該インターネットに接続される運行管理所を具備することを特徴とする環境保全大幹線鉄道。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、環境保全大幹線鉄道に係り、特に、地球温暖化防止を図るとともに、交通部門のエネルギー、環境、安全、渋滞の問題を解消するための新しい交通システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】主要道沿線の排ガス訴訟の結審間もない平成11年5月25日付けの新聞各紙に、今度は「トラック等の排ガス中ダイオキシン濃度が従来値より250倍多いことが判明(環境庁調べ)」という記事が掲載された。また、日本を含む先進各国の一人当たりの石油エネルギー消費量は、多くの開発途上国に比べ10倍~100倍多く、これら国々の近代化と人口爆発により、地球全体のエネルギー消費量が急増するといった問題も顕在化してきた。
【0003】さらに、現状のエネルギー消費が継続すると、「地球温暖化による日本地域への影響は、少なくとも今後100年で赤道の400km北上に相当」(環境庁)、しかも列島主要部の亜熱帯化の下、「2010年までに最も拡大する国内業種は15業種中で130兆円の物流流通部門」(通産省)との試算結果も出されている。
【0004】既に主要高速道を走行する車両の半数近くがトラックであり、特に大都市間の夜間の時間帯において、90%がトラックで溢れかえり、道路上空には環8雲などと称する有害な排ガス雲が発生する状況となっている。トラックによるジャスト・イン・タイムの少量、多品種、多頻度の輸送方式の増加に比例し、過速度、夜間連続走行による過労、過積載や故障、交通事故が多発している。宅配を軸に一層の急増が予想されているこの物流部門を今後もトラックのみで分担させることは、環境面、エネルギー面の悪化と渋滞を一層助長することになる。
【0005】このため、日本には待ったのない「実効的モーダルシフト政策の早急な実施」が求められていると言える。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】モーダルシフト政策とは、特にCO2 やダイオキシンといった排ガスや燃費、騒音、事故の面で課題を抱えるトラック輸送を、環境に優しい貨物鉄道輸送などに誘導する交通政策である。ところが、日本の従来政策のままでは、十分なシフト効果が得られない。例えば、貨物鉄道のシェアはかつての1割(シェア5%)以下まで大幅に減少したままである。日本の物流市場は年間7000億トンキロという世界有数の大市場であり、それが国土の太平洋側のみに集中して細長く連なる、まさに鉄道に適した地勢である。
【0007】ところが、今日の貨物鉄道のシェアはトラックの1割にも満たず、未だ減少傾向である。その結果、物流部門のエネルギー効率は主要国の半分以下となり、鉄道先進国の中で最も貧弱な状況となっている。
【0008】その最大要因は、次代を見越した総合交通政策と貨物鉄道に対する投資が不十分であった点にある。例えば生活権の中での交通権の有無、港湾や飛行場や高速道や農道といった交通関係の社会基盤整備の中での鉄道の位置づけが、実績に応じて同等に扱われていないという疑問がある。新幹線システムの生みの親で、世界的鉄道先人である故・島氏の「次は新しい貨物鉄道の番」の知見は日本では実現されず、未だ再生ビジョンのない状態が続いている。
【0009】では、自動車や運河や鉄道が発達している北米や欧州や豪州等の先進各国において、貨物鉄道のシェアはなぜ日本よりも高く、経営的に良好なのか。日本の貨物鉄道は、成長を続けている世界の主要貨物鉄道各社(以下、成功形と略す)と比べ、どこがどう違うのか、主な比較結果の差異を表1に示す。
【0010】
【表1】

【0011】表1の比較結果から世界と日本の貨物鉄道の現状をトラックに例えるとすれば、あたかも荷物を満載したインテリジェントな大型トラックが編隊を組んで専用道を疾走するのに対し、人込みの中、渋滞する路地裏を軽トラックで手探りで運搬するようなものだと思われる。
【0012】各国の運輸大臣級も参加する貨物鉄道の著名な国際会議、IHHA′94での発表の折り、「膨大な国内物流市場を日本が有するのに、なぜ重荷重鉄道がないのか」といった類の質問を専門家から受けたことがある。貨物鉄道経営で成功している各国の大会社から見れば当然の疑問なのである。
【0013】年間7000億トンキロという国内物流市場は大型トラック業者やJRコンテナに換算すれば、概算で年間で7~14兆円相当となる(トンキロ当たり10~20円換算、JR貨物では定価約12円、実勢7円、トラックでは20円)。この金額は速達性や定時性や常時物流監視といった品質面の向上といった付加価値を考慮すると、さらに少なくとも2倍以上の市場規模となることが大手宅配業者の収益性などから推察できる。この市場規模は、JR各社全体の巨大な鉄道旅客市場(世界最大)を遙に上回っているのである。
【0014】本発明は、上記状況に鑑みて、地球温暖化防止を図るとともに、交通部門のエネルギー、環境、安全、渋滞の問題を解消するための環境保全大幹線鉄道を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、〔1〕環境保全大幹線鉄道であって、鉄車輪を有するとともに、高層化された部屋が配置され、搬送式の車体床面を回転式となし車体側面が開閉され、高層化された通路を有する回転扉を備える車両と、この車両へゲートを経て搭載され、また車両から降車される自動車を管理するゲート管理所が配置されるターミナルとを具備することを特徴とする。
【0016】〔2〕上記〔1〕記載の環境保全大幹線鉄道において、前記車両は客貨車構造であり、線路軌間は2.503m±1.1mの超広軌、車体幅は5.2m±1.0mの超拡幅、車体高さは現行建築限界近傍の7.2±1.0m、軸重はヘビーホウル鉄道並みの23t±4tとするようにしたものである。
【0017】〔3〕上記〔1〕記載の環境保全大幹線鉄道において、前記車両の機関車には、自らの駆動力に加え、前記編成各車の駆動力配分制御、給電設備と駆動力集中指令制御装置を有し、前記編成各車に引き通した直流母線や周波数一括制御の3相交流母線に給電することを特徴とする。
【0018】〔4〕上記〔3〕記載の環境保全大幹線鉄道において、前記3相交流母線に接続され、車軸を駆動する軸一体型歯車レス3相交流誘導電動機を具備する車両で編成する列車を構成することを特徴とする。
【0019】〔5〕上記〔3〕記載の環境保全大幹線鉄道において、前記ゲート管理所に接続されるローカル基地局、このローカル基地局に接続されるインターネット、このインターネットに接続される運行管理所を具備することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】ここで、まず、本発明の環境保全大幹線鉄道とはどのようなものであるかについて説明する。そのヒントの一つが欧州大陸と英国間のドーバー海峡の地下を走行するユーロトンネル用貨物列車である。
【0022】この貨車の車体断面積は世界最大であり、幅が4.7m、高さが5.0mである。この貨物列車は、ドーバー海峡両端の2つの駅で運行され、駅間距離は100kmに満たない。この貨物鉄道は限られた地域でのフェリー的な運行でありながら、今や従来のフェリーに代わって大動脈の機能を果たしている。乗客は高速道路から料金所を通って貨車に直接車ごと乗り込めることから、高速道路状にリンクしていると言える。
【0023】ただし、軌間はユーロスター(旅客列車)との共用使用のため従来の1435mmという標準ゲージのままであり、単に車体幅を2m弱拡大しただけであるため、乗用車の積載は貨車の左右バランス上、車内中央に一列駐車したのみである。積載台数は上下2層構造にして増やしているが、車体高さは海底トンネル用列車の制限のため、北米のように3層構造までは至っていない。また、バスやトラックといった超特大車は積載できるようになったがその構造は1層構造のままである。
【0024】その結果、北米などの海上コンテナのダブルスタック輸送と比較すれば、軸重上では7割程度、床面積では50%の能力しか活かされていないようである。
【0025】また、積載方法は従来のカートレインと同じ車端部からの押し込み方式のため、特に中間駅においては速やかな自動車の出し入れに時間を要し、駅停車毎に車移動の作業を要するといった問題がある。
【0026】そこで、日本の自動車運搬用のヘビーホウル鉄道の検討にあたっては、かつての新幹線開発の例に習って、従来の常識や寸法制限に囚われず、自動車の積載効率と車両構成とインフラコスト低減にとって最適解は何かを探りながら検討した。
【0027】その結果、貨車の道路化が可能な大きさとそのためのトレッド(軌間)寸法の拡大に行き着いた。さらに貨車の多層構造化と車体側面からの積載方式と、搬送式の車体床面と、その通信システムによる運行管理と課金及び積載効率の向上、高加減速の駆動、制動方式について検討した。
【0028】以下、本発明の環境保全大幹線鉄道の構築の要件について説明する。
【0029】(1)走行抵抗の小さな鉄車輪によるエネルギーの有効利用省エネの最大の鍵は、走行抵抗であり、中でも転がり抵抗を低減することである。この転がり抵抗の最も小さい車輪の代表例がベアリングである。ベアリングや鉄車輪のような硬質材の転がりは重量物でも接触部の面積が点のように小さいため、鉄車輪接触部の変形による発熱損失も殆ど生じない。新幹線の場合、最高速度から停車までを惰行で数十km近く転がせることも可能である(走行抵抗5kg/t以下)。鉄車輪と鉄レールの転がり接触を特徴とする鉄道方式が交通機関の中で最も省エネとなる理由がここにある。さらに、電車のように電力回生(リサイクル)ブレーキを取り入れることで、その特性が増す。
【0030】一方、自動車に用いられるゴムタイヤのような軟質の車輪では、材料の強度も小さいため荷重が増すほどに車輪を多く要し、さらに荷重の増大と共にタイヤの変形量や接触面積が鉄車輪の100倍程度まで増大する。そのため、熱の発生や磨耗が増し、結果的に転がり抵抗、すなわち走行抵抗が10倍まで急増する。ゴムタイヤのクッション性と軽量構造は長所であるが、今日的なトラックの環境問題の解決には対応できない。また、小型高速貨物船や地上ベルト輸送といった手段でもコストや保守面、高速化や省エネの面で根本的な課題が少なくない。
【0031】以上のことから、物流の省エネ化は鉄車輪の鉄道方式が基本になる。因みに、重荷重、大量、高速、連続運転になるほど鉄車輪が優れ、その代表例が陸上交通機関の中で最速大量輸送を誇る新幹線システムである。鉄車輪はコストや耐久性やリサイクル性にも優れるため、今や都市間、都市内含めて世界的に電気鉄道へのインフラ回帰が行われていると言える。
【0032】(2)電気技術のハイブリット化によるエネルギーの有効利用省エネ時代の交通システムは電力回生電車が基本である。このことは自動車の電車化、すなわち、電動機駆動式と電力回生ブレーキ方式が自動車にも採用され始めたことでも明らかである。
【0033】このことから、この大幹線鉄道の動力方式は電気式か電気式ディーゼル方式、中でもシリース形ハイブリッド方式とする。エンジンの燃焼方式はリーンバーンとする。機関車列車の電力回生ブレーキの場合、ブレーキ頻度が少なく、加減速度が小さいため、寿命(充放電サイクル)や出力(パワー密度)に課題のある蓄エネルギー要素でも実用可能となる。さらに、ブレーキ頻度の僅かな省エネ運転法を含めて適用することで、高速走行でありながらトラックに比べ燃費や排ガス量といった環境負荷を1/10以下まで抑制できる。
【0034】(3)生産性の大幅な向上元々鉄道は動力とインフラ技術の乏しい前世紀から機関車牽引の貨物列車方式で特性を発揮してきた。今も成功を続けている貨物鉄道は、長大編成化と貨車の大型化、多層化を特徴としている。一例として、北米の重荷重貨物列車と称する列車では、編成長さが1マイル(1.6km)以上(日本の3倍)、牽引トン数で10000トン以上(日本の10倍)のものも少なくない。10トントラックに換算すると1000台分で高速道路100kmに相当する。言い換えると、これを1/1000の1人のドライバーで5倍長い距離を運ぶことができる。
【0035】この差により北米の鉄道はトラックに対し高速性、生産性、信頼性や低コスト面で遙かに有利になり、コンボイなどの大型トラックによる物流シェアを圧倒している。貨車の大型化も進んでいる。例えば、3層構造の自動車用やダブルスタックと称する海上コンテナ2段積み用、大型トラック積載用等を開発し、需要を取り込んでいる。線路構造や運転制御法も同様にシンプル化を図り、従来の変電設備や信号設備も要せず、貨物鉄道の地上設備はほぼレールのみに簡素化されている。
【0036】欧州においてもユーロトンネル用貨車では大型2階建てバスなども車内に積載可能とする大幅な大型化が実施され、乗用車用の2階建て道路化構造や客室併設構造が用いられている。いわば鉄道の大型フェリー(船)化を関係各国の投資で実現したのである。
【0037】これらの状況から判断できるように、日本における次代の物流の生産性を大幅に高める上で、トラック輸送の鉄道へのモーダルシフト化が必須であり、新しい概念のヘビーホウル鉄道の構築が必須となるのである。
【0038】(4)ターミナルへの自動集荷方法従来の貨物鉄道の場合、旅客輸送のように荷物が勝手に駅に集まってこないため、集荷や積載の作業を要し、この部分の作業性向上とコスト低減が長年にわたって課題となっていた。一方、今日のトラックによる輸送の場合、道路があるかぎりドアからドアへの輸送が可能であり、むしろ、この特性を生かすだけでシェアを拡大してきたといえる。
【0039】そこで、従来の貨物鉄道の集荷方法を転換し、「荷物とはトラックや自動車、自動車道そのもの」とすることにした。こうすることで、荷物はターミナルで、自動集荷することが可能になる。
【0040】課題は、荷物を積載したトラックや乗用車自動車を貨車に載せて運ぶピギーバック方式をビジネスとして成り立たせる点、及び物理的、強度的に大型トラックなどを貨車の上へ簡単に効率よく積載する技術とソフトの確保を実現する点にある。
【0041】(5)貨車の高速フェリー化検討の結果、上記(1)~(4)記載の要件は、いずれも問題がないことが分かった。鍵は一両の貨車に積載可能な自動車の台数を強度的にコスト的にどこまで増やせるかにある。
【0042】調査の結果、鉄車輪と鉄レールの転がり接触の場合の1車軸当たり総荷重、いわゆる軸重は、重荷重鉄道貨車に余裕を加味した25トン(100トン4軸貨車相当)とした。これを一般的な4軸貨車とし、車体長さ26mで車体重量を30トンとすると、貨車一両当たりの積載荷重は70トンが限界となる。乗用車1台当たりの総重量を乗員込みで1.7トンとすると41台分に相当する。現状の国内用貨車の積載台数は8台であることから、容積の面で割の悪い軽い荷物であり、重量的には数倍の余裕がある輸送となっていることがわかる。
【0043】従って、自動車輸送を主とする鉄道の貨車の大きさや構成を強度上の限界まで大型化、多層化し積載台数を大幅に増やす。こうして、大型高速フェリー的な貨車構成の検討と高速道路よりも優れた商品性を提供できるかどうかを見極める必要がある。
【0044】(6)高速道路輸送よりも一層安価な輸送コスト低減策日本の貨物鉄道の平均的な輸送コストは、トンキロ当たり実質7円(積載率が少ない場合は12円)である。一方の自動車の場合はこれよりも2倍以上高く、乗用車形の小型商用車になるほど急激に高くなる傾向がある。例えば、日本の高速道路の料金設定は、重さ1tの乗用車と重さ8tのトラックとが同一料金とされているため、トンキロ当たりでトラックの方が格段に安くなる。且つ、現状の料金設定に軌道破壊の目安となる通トンベースの設定(鉄道でいう特急料金の子供割引に相当か)が微々たる内容であり、大口の割引制度も存在している。
【0045】そのため、料金設定は、車両の重量よりもむしろ車間距離相当の道路占有料(鉄道の座席指定料相当)と距離ベース(運賃相当)で設定されているとも言える。その結果、現状の自動車で300km相当利用した場合の輸送コストは、乗用車が33円/キロとして9900円(鉄道の4.7倍)、重さ8トンの中型トラックで21900円(1.3倍)、重さ12トンでは27000円(1.1倍)と推察される。内訳は、キロ当たりの高速道路使用料が約18円、燃料代が約9~30円、タイヤの損耗代等が約6~25円、以上の合算で乗用車が33円、トラックが73円(トンキロでは9円)と推定した。
【0046】このような従来形の高速道路料金の下では、新しい鉄道方式は、特に乗用車に対して大きなビジネスチャンスを有していると言える。さらに今後、地球温暖化対策として炭素税が日本にも導入された場合(導入が想定される状況になりつつある)、例えば重いトラックほど高速道路料金が高くなると考えられ、例えば料金が重量重視で従来の3倍となった場合、貨物鉄道はトラックに対しても膨大なビジネスチャンスを得ることになる。
【0047】特に、現状でも、荷物を満載したトラックのゴムタイヤの転がり抵抗は、鉄車輪に比べ10倍以上となる課題があるにもかかわらず、エネルギー大消費国の日本にトラックでの長距離、高速、重量物輸送を優遇する高速道路運賃体系や税制が未だ存在しているという事実がある。このため、開発途上の各国の心情からして早晩に欧米並みにまでこれに対する見直しが求められるものと推察される。
【0048】(7)インフラ建設のコスト低減策日本の場合、物流の需要を見込める地域は何れも都市が連なる太平洋沿岸の地価の高い地域に集中している。したがって、コストを減らすには何にもまして都市の地価を含めたインフラ部分の大幅なコスト抑制が鍵である。
【0049】しかし、これについても概算検討の結果、意外に少ないことが分かった。それは元々の鉄道投資が今までの実績から比較して異常に少ないことからも分かるように、道路や飛行場や港湾に比べ、国土の利用効率の面でも10倍~100倍以上優れている点にある。例えば、用地幅15mの全線複線2000kmに要する土地は僅かに30km2 であり、駅部を含めても日本国土全体の一万分の一未満である。
【0050】また、新幹線のように市街地中心部に高価な駅と高架橋と給電設備を延々と配置する必要もない。郊外の主要な高速道路沿線と主要港湾間に盛土と枕木支持の鉄レールのみを敷設するだけである。むしろトンネル等の構造物のコストが目立つことになるが、これについても方策がある。車体は大断面でありながら、基本的に架線のない非電化方式とし、速度も在来線特急並みに落とすことにより、青函トンネル等の新幹線断面に近づけることができる。
【0051】更に、曲線半径も新幹線より遙かに小さい半径1000mを選択できることから、ルート選定の面での低コスト化も可能である。さらに、岡山以西や仙台以北の長大トンネルや長大橋梁区間を可能な限り単線構造とし、信号設備についてもGPS併用の無線方式とし、変電、給電等の地上設備を北米並みに設けず、100kg/mの専用レールのみとすることで、大幅な低コスト化を実現する。例えば建設コストは、高速道路や新幹線に比べ数分の一まで低コスト化を図る。
【0052】盛土路盤の建設費もTGV並みの10~15億円/km(10万円/m2 )として計2~3兆円、一部の橋やトンネルを含めても総額で4兆円程度と推察する。この額は、例えば3本ある本四架橋群のほぼ1本分強の建設費であり、同じ建設費でほぼ本州両端の長さに相当する2000kmの大幹線の建設が可能になるはずである。
【0053】(6)世界的な上下分離方式でのコスト低減策さらに、用地買収と軌道工事部分の費用負担については、世界の交通政策や鉄道民営化政策で一般的な上下分離の公共事業式(財源は炭素税、自賠責、高速道)とする。したがって、鉄道事業者の負担はトラック事業者と日本高速道路公団との関係と同様に、車両費、運転動力費、人件費、車両及び駅の保守費と軌道使用料(保守費相当)に限定される。ターミナル部の整備費については国と地元自治体との3等分負担が考えられる。
【0054】一方、運転動力費と車両保守費の削減を両立させるため、付随貨車用の低コスト駆動軸方式を開発し、省エネ化とブレーキ摩擦材の損耗防止を図る。
【0055】以上のような方式により低コストな貨物鉄道のコストをさらに削減することが可能になる。鍵は、上記の地球環境社会基盤整備としての上下分離政策である。軌道使用料をトンキロ当たり2円と仮定しても、重荷重貨物鉄道のインフラ以外の経費はもともと小さいため、トンキロ当たりの原価を5円以下まで設定可能になる。
【0056】これを重さ1tの乗用車を300km輸送する場合に単に当てはめたとすれば1500円(高速道の1/6以下)、重さ8tのトラックでは12000円(高速道の1/2、料金と税の改定により1/5)となる。この鉄道による輸送原価は現状の高速道路に比べて極めて安いものであり、従って、トラック業者や一般の自動車ドライバーから好意的に受け止められるものと考える。
【0057】こうして環境保全大幹線の料金設定の主導権は、低コストな鉄道側が持つことができる。このことで、例えば、輸送距離200km程度のトラックを積載した場合の運賃や、あるいは渋滞する道路沿線150kmの区間で乗用車を積載した場合の運賃は、高速道路に比べてコストメリットを大きく出すところまで抑制可能になる。また、航続距離の短いEV(電気自動車)や大型EHVの設計も容易になり、普及を支援することにもなる。
【0058】以上の本発明の環境保全大幹線鉄道の構築の要件を踏まえて、その環境保全大幹線鉄道の実施例について説明する。
【0059】図1は本発明の実施例を示す環境保全大幹線鉄道の模式図、図2はその環境保全大幹線鉄道の通信システム構成図である。
【0060】図1において、Aは第1のターミナル(例えば、大阪駅)、Bは第2のターミナル(例えば、名古屋駅)、Cは第3のターミナル(例えば、東京駅)であり、例えば、第1のターミナル(大阪駅)Aにおいて、レール1上を走行する大幹線車両2(ここでは、3階建であり、1,2階には自動車、3階には乗客が搭乗する)には、自動車3がゲート10から搭乗することができる。
【0061】また、第2のターミナル(名古屋駅)Bでは、自動車3がゲート10′から降車したり、自動車4がゲート10から搭乗することができる。更に、第3のターミナル(東京駅)では自動車3,4がゲート管理所を設けるゲート10′から降車する。
【0062】また、図2に示すように、搭乗する車両3,4は各ターミナルのゲート管理所11において、車両3,4がITS(高度道路交通システム)に用いられるETC(自動料金収集システム)用ICカードを有する車載端末機5を搭載する場合には、その車載端末機5とゲート管理所11との無線通信により課金処理を行う。その場合、軸重計12がゲート10に敷設されているので、その車両の重量データをゲート管理所11で収集して課金処理を行う。
【0063】もし、ETC用ICカードを有する車載端末機5を搭載していない自動車の場合は、軸重計12による車両の重量データと自動車に搭載するタグ(車両のID、型式などの情報を記憶した情報媒体)の情報をゲート管理所11にて無線通信により収集することにより課金処理を行う。また、降車する自動車は、ゲート10′によって降車がチェックされて、車両における空きスペースが確認され、新たな自動車の搭乗が可能になる。
【0064】また、ゲート管理所11において、搭乗のために通過する自動車に対して、音声又は表示板(図示なし)により、自動車の搭乗位置などの情報を提供することができる。
【0065】それぞれのゲート管理所11からの情報は、ローカル基地局13で収集して、インターネット14を介して大幹線鉄道の運行管理所15に通信される。この運行管理所15では課金情報や大幹線車両の位置情報などを管理することができる。なお、大幹線車両の位置は、GPS等により、測位することができる。
【0066】上記では、ターミナルAからCの方向への輸送について述べたが、当然に逆の方向への輸送を行うようにすることもできる。
【0067】このように、ターミナルにおいて容易に自動車を搭乗させたり、降車させたりすることにより、スムーズに大量の自動車輸送を行う大幹線鉄道を構築することができる。
(A)環境大幹線の列車構成図3は本発明の実施例を示す大幹線鉄道車両・自動車の出入り機構及び従来の車両の構成図、図4はその大幹線車両の搬送式の車体床面の駆動態様を示す図、図5はその大幹線車両への車載方式の説明図である。
【0068】図3(a)に示すように、大幹線車両21は、例えば、長さL1 は26m、幅L2 は5.2m、高さL3 は7mで、図5(a)に示すように、大幹線車両21は自動車を1階、2階に搭乗、大型自動車の場合は、天井の高い1階と2階合わせた高さの大型自動車専用車両26に案内して搭乗、3階には乗客を搭乗させる。例えば、1階と2階合わせた高さL5 は4.1m、3階の高さL6 は2m、鉄車輪25を有する車両底面の高さL7 は0.9m、客席の片側の幅L8 は1.7m、大型自動車の高さL9 は3.9m、その幅L10は2.5mである。
【0069】軌間L4 は車体幅の半分近い超広軌とし、例えば狭軌と標準軌の和に相当する2503mm程度とすることで、従来車両の3線軌条化にも対応可能な寸法を選択する。貨車の超広軌化により、自動車の2列積載も可能になる。台車は一般的な2軸ボギーとする。自動車の積載方法は従来の列車端部からの押し込み式を改め、貨車の横から自在に乗り入れる方式「車体床面回転開閉式」とする。
【0070】つまり、図3(a)及び図4に示すように、大幹線車両21には1階と2階への通路を有する車体床面22Bがその中心に設けられる駆動軸22Aを中心として、回転する。つまり、搬送式の車体床面22Bを回転式となし車体側面が開かれる高層化された通路を有する回転扉22を備え、道路側の1階と2階へ案内するガイド用通路23,24が地上設備として配置される。なお、図示していないが、駆動軸22Aの駆動源としては、電動式モータあるいは油圧モータなどのモータを用いることができる。
【0071】因みに、従来の車両29は、図3(b)に示すように、例えば、長さL1 ′は20m、幅L2 ′は2.8m、高さL3 ′は4.5mであり、図5(b)に示すように、1階建て29A又は2階建て29Bである。
【0072】本発明の列車編成は、図6に示すように、機関車31に貨車32を16両連ねた1680トン・340mを1単位とし、この列車を4単位連ねたスレーブ制御式の重荷重列車を標準とする。各貨車32の制御系は4両1ユニットに配置し、低コスト化を図る。
【0073】積載台数も従来と比較し、軸重制限一杯までで積載効率を4倍相当高めることが可能になる。例えば、車搬専用貨車の場合、小型乗用車を30台(5台3列2層)、屋根のない無蓋形の車搬専用貨車の場合、大型2階建てバスや大型トラックの4台(2台2列)積載が可能となる。
【0074】この場合の貨車1両の大きさは、車体長25m(従来20m)、車体幅5.5m(従来2.8m)、車体高さは1.0m(従来コンテナ貨車相当)であり、屋根と壁付きの客貨車用貨車の車体高さは7.3m(従来4.5m)とする。
【0075】これにより、従来と比較して、容積比で4倍(寸法比1.6倍)まで大型化となる。貨車構造は一般的な客貨車形での積載の場合、乗用車を2階建て構造、大型トラック等の大型専用を1階建て構造とする。客室は最上階(3階)に配置する。なお、この階層及び配列はこれに限るものではなく、種々変形可能である。
【0076】これに最上階の幅広客室の乗車定員が最大90名(6×15)、ラウンジ付きを含め平均60名となる。従って、編成全体64両で3840名、自動車が普通乗用車換算で1280台輸送可能となり、いずれにしても大型フェリーを大幅に上回る輸送力となる。これにより、列車総重量は7000トン、1700mの最大列車編成となる。この列車1編成に積載する乗用車を地方の高速道路に代用するとすれば、車間距離100m換算で長さ128kmに相当する。
【0077】また、コンテナ貨車や重量物の場合には、海上コンテナの軽いものの場合が横2列2段積みの4個まで積載可能とする。但し、世界標準40フィート海上コンテナの重量物の場合、軸重制限一杯の重さとなるため、1列2段2個積みというダブルスタックを基本とする。
【0078】一方、日本独自の5トンコンテナ(総重量7トン)については、横2列に並べることで従来の2倍の10個までの積載を可能とする。これにより、編成で従来の国内貨物列車の5倍近い輸送力を確保する。
【0079】組成メニューは4両1単位毎に乗用車、中型トラック、大型トラック、コンテナといった機能別組成法、あるいは方向別組成法とする。
【0080】次に、車両仕様について説明する。
【0081】図7に示すように、機関車41は、大型リーンバーン・ディーゼルエンジン51による発電機52を備え、6軸電気式駆動方式とする。駆動制御方式はPWM方式電圧形インバータ53制御で、編成列車制御方式はスレーブ式である。機関車総重量は144トン、電動機出力は350kwで機関車総出力は2100kwと少ないが、発電総出力は貨車駆動動力の発電用を含めて4000kwとし、貨車用の50%分散駆動制御によって、列車の省エネ、省保守化を図る。
【0082】また、ブレーキ方式は全電気ブレーキ対応電気指令式個別制御形空気ブレーキ方式であり、発電抵抗を有するが、蓄エネ用バッテリーは有しない。最高速度は150~140km/hとする。
【0083】一方、貨車42の場合は付随車でありながら1ユニット内の2台車4軸に対し、ベアリング的なギアレス式低コスト駆動軸43を設ける。駆動軸43の電動機54は加減速用の120kw誘導電動軸構造とする。例えば、図8に示すように、車体底部の支持部61に柔支持で固定された3相誘導電動機54によって車軸43を駆動することにより、鉄車輪25を回転させて、レール1上を走行させるようにする。
【0084】特に、軌間L4 が2503mm程度と広げられたことにより、3相誘導電動機54を実装することが可能になった。また、貨車42は低コストな付随車用であり、電車のような電力変換などの機器類は持たず、動力制御は編成用電力引き通し線により機関車41側から一括して行う。
【0085】また、図7に示したように、車体枠内のエネルギー蓄積用電池55を備え、エネルギーを留めることができる。設計最高速度は150km/h、ユニット内の計画常用加減速度は0.9km/h/s(μ=0.1相当)、非常用の基礎ブレーキ機構はダブルディスク、制御方式は新電磁併用電気指令式個別連続制御ブレーキ方式とし、停留用にばねブレーキを有する。
【0086】次に、運行ルートとターミナル駅について説明する。
【0087】図1及び図2においては、その典型的な運行ルートについて述べたが、日本の物流は南関東を起点にした東海筋と東北筋を軸に成り立っている。鉄道のコンテナ輸送のみに注目すれば、高速道路が本州と唯一途切れている北海道-関東間が多く、同様に関東から遠い広島-関東間も競争力のある地域である。また、鉄道貨物は輸送距離が数百km以上の遠距離になるに従い競争力が出る。
【0088】一方、今日的な輸送機関であるトラックの場合、距離的に200km未満の範囲で圧倒的に強い。さらに需要の大きい地域は首都圏環状道路上に環状雲が生ずる程に首都圏が集中し、北関東から関西に至る太平洋ベルトに集中している。
【0089】これに対し、世界標準の海上コンテナの場合、韓国釜山が日本各港のハブ機能を増大させている一方、国内では日本独自規格の従来形コンテナが多い。但し、今後、鉄道側、港湾側、道路側の有機的インフラ整備を行うことで、海上コンテナが世界レベルまで普及する可能性がある。その場合、重荷重鉄道とハブ港との連携が鍵になるものと世界の例から推察する。
【0090】以上のことを鑑み、当面の運行ルートは、本州内太平用側両端間の港湾沿線とする。具体的には東北・常磐~東名~名神・山陽の各自動車道のICに連なる八戸港~北上ヤード跡(東北道)~宮城野タ:ターミナル(港)~郡山タ~水戸(常磐道・大洗港)~成田空港(東関道)~千葉港~東貨物タ(東京港)、並びに東京貨物タ~横浜港~西湘タ~南静岡タ(東名)~名古屋タ(または港)~亀山~大阪茨木(名神)~神戸港~岡山西タ~東福山~広島港(山陽道)~宇部港とした。東北ルートは北海道向けのフェリーの玄関口である八戸港~東京港とし、山陽ルートは東京港~宇部港とする。
【0091】一方、需要が多く地価も高い首都圏対策として、水戸(車両工場)~土浦・石岡(常磐道)~浦和(東北道)~新座タ(関越道)~国立(中央道)~厚木(東名道)~西湘タに直線的なバイパスルートを設け、これによって環状8号線などの環境対策用代替え道路の機能をも与える。
【0092】これにより東北筋から山陽筋までの1750km区間、平均列車キロ900km(660~1750km)の長距離一貫高速運行を5~8路線確保する。
【0093】各自動車連絡jターミナル駅については、基本的にユーロトンネルと同様に道路用自動料金所案内システムを発展させ、自動車を積み込む方法は、上記したように、貨車横側から出し入れする回転多層化構造と搬送式車体床面とすることで、ターミナル敷地の削減と停車時間の短縮化(中間駅15分)を両立させる。
【0094】次に、運行ダイヤと料金案について説明する。
【0095】日本の場合、トラックによる物流は夜発車の早朝到着のパターンが多く、乗用車は朝発着の夜帰着の場合が多い。さらに海上コンテナ輸送では日中の時間帯が多い。そこで各ターミナル部分での運行ダイヤは、早朝から深夜の間、1時間に片方向2本発車のパターンダイヤを基本とする。ただし、仙台以北並びに岡山以西の一部単線区間については、1時間に片側1本とし、首都圏発のものについては毎時最大8本まで方向別に増発する。さらに物流量の季節別時間変動に対しては、前述の貨車16両1単位を2から4の間で増減して対応させる。
【0096】列車は、最高速度125km/h、平均速度あるいは表定速度を100km/h(首都圏南部除く)、常用加減速度0.9km/h/s、平均列車キロ900km、平均駅停車間隔150km、中間駅停車時間15分とする。1駅停車毎に加減速時間を含め20分を要すことから、高速道路以上の速達性と乗り換えの無い利便性を確保するため、「こだま」形運用を設けず、「ひかり」形を基本とする。
【0097】料金については、上下分離によって大幅な低コスト化が可能になるが、他の交通機関のコストに合わせて競合する物流機関と調整し決定する。例えば、自動車用については、高速道路代+燃料代+タイヤの磨耗代にトラック運転士の時間価値代を合算したものとする。コンテナについては、トンキロ10円程度とする。
【0098】以上の方法により、料金を原価の5~2倍程度に高めに設定し、将来の値下げ代や路線延長の余裕を残す。
【0099】次に、需要予測とその効果について説明する。
【0100】本発明の環境保全大幹線鉄道のコストは上下分離政策で大幅に低いものとなる。さらに、今後、世界標準の環境政策や炭素税などの導入も予想されるので、シェアの調整や本環境保全大幹線鉄道への誘導がさらに容易になると判断した。試算したトラック輸送からのモーダルシフト量は法人用の場合が沿線の輸送距離100kmを0%、500kmを100%とし、個人用の場合が沿線の輸送距離200kmを0%、600kmを100%とし、その間を直線で比例させて概算推定した。
【0101】また、八戸以北や徳山以西から首都圏までの物流のシフト量は、鉄道以外の部分の50%として概算推定した。更に、船からのシフト量については、当該港湾の海上コンテナとフェリーボート内の自動車だけに限定し、輸送距離200kmを0%、600kmを100%とし、その間を単純に直線比例させて概算推定した。その結果、日本の輸送機関別シェアは、現状のトラック58%、船舶38%、鉄道4%が、本環境保全大幹線鉄道の導入により、トラック48%、船舶26%、鉄道26%程度になると推定した。従って鉄道部門は7倍の大幅回復となる。
【0102】一方、大阪から首都圏に至る高速道路のトラックの数は従来の半分まで減少すると予想した。高速道路のトラック占有率が80%の場合、従来の60%までの混雑率に大幅に改善できる可能性がある。
【0103】日本のエネルギー消費に占める交通部門の割合は20%であり、今後に増加の傾向を増す可能性を有している。この交通部分において、エネルギー効率がトラックの10倍高い鉄道部門に10%のモーダルシフトを実現したとすれば、日本の交通部門におけるCO2 の削減効果で9%に相当する大きな効果が直接的に現れる。
【0104】さらに間接的効果として、後続距離の短いEV車の普及を側面支援する機能と、首都圏や高速道路の渋滞を解消する機能を果たすことになり、相乗効果となるはずである。それらを含めた波及効果は、外環道を含めた高速道路建設の数倍、10兆円(東京都試算結果)を軽く上回るものと推察する。
【0105】本発明の環境保全大幹線鉄道の企業運営に要する職員数は極めて少ない。1日当たりの列車本数が180本の場合、運転士の数を4交代と休暇を含めて900名、同様に客室乗務員が1800名、24駅の駅要員を1920名、3倍に大型化した車両等の保守要員は自動化ラインにより1000名に抑え、列車群指令、衛星、情報管理センターに150名、技術開発部門や商品企画、物流政策、教育部門等に150名、海外物流基地や関係機関への人事交流に50名、経営、顧客営業、総務、財務といった本社部門が10%の600名、以上、全体でも6570名である。
【0106】線路保守は上下分離により『仮称(道路、鉄建公団)』等に委託することとする。この部門の要員は徹底した自動化により500名程度に抑制する。
【0107】このようにして要員規模はJR貨物の11900人の55%程度でありながら、鉄道事業収入は19倍の3兆2280億円となり、職員一人当たりの売り上げは5億円相当であり、生産性は30倍以上となる。
【0108】本発明の環境保全大幹線鉄道の高い生産性は、北米などで成長している重荷重鉄道をさらに特化させ、欧州の交通思想を考慮し、日本の特質である膨大な交通需要が集中する日本の太平洋ベルト地帯に適用して得られるものである。
【0109】また、ドアからドアへの便利な輸送手段を特徴とする自動車に重荷重鉄道を合わせ、各交通手段全体の長所を伸ばすための総合的な交通・環境行政を適用することにより、大きな収益性の確保とモーダルシフトとの両立が可能になるものである。
【0110】元来、鉄道は自動車や航空機に比べ、土地の利用効率やエネルギー効率の面で数倍以上優れている。新幹線や都市鉄道の実績が示すように、高速道路や飛行場建設に比べ僅かな土地で高効率に役割を果たすことが可能なのであって、当然の結果と考える。
【0111】さらに、ここで紹介した環境保全大幹線鉄道と称する次世代ヘビーホウル鉄道構想は、日本のみならず、アメリカを始めとする大陸的な自動車大国、あるいはモータリゼーションの進展著しい発展途上国の国々にとっても環境負荷の抑制と近代化の両立が可能になり、ひいては世界的なEV車社会を側面支援することにも繋がる交通システムといえる。
【0112】また、上記実施例として搭載するものは、主に乗用車である自動車として説明したが、コンテナなどが搭載された荷物であっても、自動的に上記した大幹線鉄道に搭乗させることができるものであれば、これを自動車の範疇に入れることができる。その意味では、ここでは自動車は広義の意味を有するものである。
【0113】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0114】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0115】(A)地球温暖化防止のため、交通部門のエネルギー、環境、安全、渋滞といった問題を大幅に解決することができる。
【0116】(B)世界で成功しているヘビーホウル鉄道を進化させて超広軌化・超大型化し、同様に給電や信号といった従来設備に頼らない低コストな鉄道とし、列車と車両の構成については、既存のハイブリッド駆動の貨物専用ヘビーホウル鉄道に代え、電力回生形駆動の客貨併用高速列車となし、自動車や船舶と鉄道との得失の補完を実現することができる。
【0117】(C)貨車の道路化が可能な大きさと、そのためのトレッド(軌間)寸法の拡大、さらに、貨車の多層構造化と車体側面からの積載方式とその通信システムによる運行管理と課金及び積載効率の向上、高加減速の駆動、制動方式の採用による、効率的でかつ低コストな環境保全大幹線鉄道を提供することができる。
【0118】(D)フィージビリティ・スタディの結果、高速道路よりも高速・安価・低公害・安全・高収益で国土の高度利用や雇用創出の面での効果も期待できる見通しを得た。

Retrived from http://www.patentjp.com/13/I/I100049/DA10015.html.
 

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